日本の植物相は、専門家はもとより、たくさんの地域研究者のたゆまぬ努力のおかげで、国レベルから次第に県単位の精密な様相が明らかになりつつあります。こういう調査の成果は地味なものですが、純科学的な研究ばかりでなく、環境保全、自然保護、生物教育、資源調査、国土計画などの資料として基本的な重要性をもっています。福岡県植物目録第一巻はシダ植物をまとめたもので、リストの元になった標本のデータが、位置座標を含めてすべて記録されています。標本のデータは、従来のリストでは従属的な扱いしか受けていませんでしたが、実はこれが最も重要なもので、近い将来日本植物のデータベース化の際、そのまま取り込める資格を備えています。図鑑から引写しの説明や検索表は割愛して、標本のデータと独自の観察ノートのみに絞ることは、著者としては大きな冒険だったでしょうが、巻末の全種のメッシュ分布図とともに、これからの研究的地域植物目録の見本としても、参照の価値あるものとして推薦します。